研究事業(その他)
杉並区独自の救命救急体制構築 ~ 杉並保健所の取り組み ~
平成18年6月29日掲載
【背景】 | ||||||
杉並区は東京都区部の西端に位置し、人口513,784人、年少人口構成比9.5%、高齢者人口構成比18.0%(平成17年1月1日現在)で、都心に隣接し早くから住宅地として開発された地域で、近年の人口数はほぼ51万人前後で一定しているが、人口構成では年少人口が徐々に減っている。 二次保健医療圏としては隣接する新宿区・中野区と共に区西部医療圏に属し、圏域の面積は約67.8k㎡で東京都全体の3.1%を占め、人口は平成17年1月1日現在1,085,397人であり、東京都の人口の8.9%にあたる。人口密度は東京都全域の約3倍であり、13圏域中で最も高い。昼間人口指数は区中央部医療圏に次ぎ2番目に高い値となっている。二次保健医療圏としての病床数は確保されている状況である。 しかしながら、高度救命機能を有する大規模病院は区外に偏在し、加えて区内には休日・夜間帯の小児二次救急対応可能病院がなく、さらには新たな大学病院等の誘致も難しかったため、平成15年より杉並区救急医療システム検討専門家会議を立ち上げた。平成16年3月に同会議の提言を受け、同年4月より区は独自の救命救急体制の構築に取り組み始めた。 |
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【事業の3大柱】 | ||||||
平成16年度より下記3項目を重点項目に掲げ、体制整備を進めた。
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【事業の経過と成果】 | ||||||
1. 救急医療体制の整備 既存の区内二次救急医療機関7施設(平成18年4月現在、8施設)の機能分担と連携を強化することを目的に医師会・消防署を加えた「救急医療連絡協議会」を設置し、情報交換の場を設けた。 |
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![]() (図1)急病医療情報センター利用実績 |
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2.小児診療体制の強化 | ||||||
平成16年4月当初、夜間の小児救急については杉並区医師会の協力のもと、区立休日等夜間急病診療所で対応(平日午後10時半まで、土・日・祝祭日午後10時まで)していたが、検査・入院設備はなく一次救急への対応であった。 24時間対応の小児二次救急医療機関は新宿区に4施設・中野区に1施設あったが、区内にはなかった。 そこで、既に実施されていた24時間・365日の小児科医による救急医療である「東京都休日・全夜間診療事業(小児科)」の区西部実績の検討を行った。小児の救急医療では一般に23時までの準夜帯の利用が多く、来院患者24,000人の内、救急車による緊急の利用は6%程度・実際に入院に至るのは5%程度であった。 これを踏まえ、まずは自力通院可能な大多数の軽症患者を準夜帯のうちに身近な地域の中で確実に診療できる体制構築を考え、平成16年10月より検査・入院にも対応できる小児救急診療体制を平日のみ23時まで区内1病院と契約し確保し、図2にその実績を示した。季節的な変動は見られるものの、概ね外来受診者は100件から150件で推移し、受診者の約9割は入院を要さず帰宅できている。また、受診者の年齢をみると、8割が6歳未満で特に3歳未満の乳幼児の受診が全体の6割を占めていた。 さらに、平成18年4月より同病院にて土・日の9時~17時の診療契約を新規に締結し、小児救急診療体制を拡充した。 |
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![]() (図2)小児平日夜間急病診療事業実績(1施設依頼分のみ) |
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3. 区民による初期救急対応力の向上 | ||||||
・ 実践力のあるバイスタンダーの養成
(注)および貸出制度などの説明としている(平成18年3月時点、救急協力員679名)。 通常、普通救命講習を一度受講すると3年有効の認定証が発行される。しかし、心肺蘇生・AED実技を確実に習得し、いざというときに体が動くように保健所内で訓練人形・AEDトレーナーを用いた自主研修会(月1回1.5時間)を実施(図4)し、救命技能を維持する機会を提供している(H17年度9回開催、延べ86名参加)。 地域で救急協力員が4名以上集まると「まちかど救急隊」(図5)として登録でき、区から「まちかど救急隊」の看板・救命活動資材入りかばん(三角巾・滅菌ガーゼ・ラッテクス手袋・止血棒・サージカルテープ・保温シート・衣服裁断はさみ)を貸与され、地域での救命技能の普及啓発や救命活動を担っている(平成18年4月現在13隊)。 さらに、隊員が10名以上で24時間AED対応可能かつ地域行事(祭り・運動会等)でAEDを携行して待機できる等の条件を満たした「まちかど救急隊」に対してはAEDの長期貸し出しも実施している(平成18年4月現在4隊に貸与)。 区民による自主的活動を促進するべく、平成17年度は医師を含む区職員と救急協力員により区内各種まつり(区民主催)・区主催駅伝大会等でAEDを携行した救急パトロールを行い、実践の場とすると同時に専用のベストを着用することで区民への周知をも狙った活動を行った。 ・ 小児救急知識の普及・啓発事業 |
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(注)杉並区のAED配備への考え方および配備状況について |
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最新の配備状況については区公式ホームページを参照。 |
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【課題】 | ||||||
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杉並保健所長 長野みさ子 〒167-0051東京都杉並区荻窪5-20-1 電話03-3391-1355 FAX03-3391-1377 |